| フライフィッシング的本棚(8)
読む者が自由に夢をふくらませることができる一冊 ゲスト=古川広道(ジュエリーデザイナー) (2008年2月2日/東京・中目黒にて) |
![]() ■『水生昆虫アルバム』第2版。初版と第2版はハードカバー仕様。この本の科学的なところと詩的なところを一枚で端的に表している写真がカバーに選ばれている。カバーは耐久性を考慮して天地が内側に折り込まれ、そこにこの本の主役である水生昆虫の写真が配置されている(袖をさらにめくると出てくる)。また、本表紙と見返しには、水の流れを暗示するために波の模様の用紙が使われている。
■2005年に発行された新装版は廉価な並製本となり、カバー写真はやや説明的な合成写真に変更された。
■島崎さんは『水生昆虫アルバム』のなかで数々の独創をなしとげた。たとえば、水生昆虫の羽化方法を「ハッチ・コード」という新しい概念で分類したり、水生昆虫が羽化するときに体の表面などに生じる気泡を「イマージング・ガス」という新語で言い表したり、「水面と昆虫の絡み方」を「BFコード(Basic Floatation Code)」というこれも新語で解釈し直している。
■ジュラシック・フライズ──1999年、アメリカで開催された「Art and the trout fly」という展覧会用に巻いたという島崎さんのオリジナル巨大フライ。『フライの雑誌』第48号の「巨大フライのファンタジー」で詳細が解説されている。たとえば「ジュラシック・ドレイク」はテールをふくめた全長が22センチというスケールにもかかわらず、フライ的な生命感があり、また実際に使えるようにデザインされていて、当時のアメリカのタイヤーに見られたスーパーリアリズムの手法によるフライ(島崎さん曰く「生きている感じが全〜然しない」)とは一線を画していた。
■島崎さんの独創性は、フライデザインのお隣(?)のグラフィックデザインの世界でも注目されているようで、語り手として何度か招かれている。2006年の『d/SIGN』誌第12号の「水面下の心理へ...期待と予測のデザイン」では、生物の擬態に触れ、ただソックリに真似しているのではなく、「巧妙な強調と編集が入っている」ことを指摘している。また、島崎さんのオリジナルフライ「アグリーニンフ」について、「具体的な生き物を写実的に模すというのではなくて、もっと本質的な部分をズバリと突くために特徴をわざとボカしている」と説明している。「フライデザイン」と「フライアレンジ」のちがいにも言及している。 (渡渉舎/倉茂) |
|||||
![]() |
||||||
| ■はじめのページ
■フライフィッシング的本棚
■長く楽しめそうな助言集
いい本は、モノとして魅力があり、好きなときにいつでも手にすることができる自由があり、自分の興味や感覚、知識を広げてくれる刺激を持っている。この本は、フライフィッシングにのめりこんでしまった者という立場を差し引いて、本屋としての視点から見ても惹かれる。抑揚があるページ構成、美しい写真、どこのページから開いても受け入れてくれる寛容さ、なんの予備知識もない者も引き込んでしまう充実したコンテンツ──『水生昆虫アルバム』は、私が本に求める要素をすべて備えている。 |
||||||